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ビールづくりの第一段階

ワインの原料にブドウが向くように、ビールの原料に穀類(たいていは大麦)は欠かせません。

同じ発酵飲料でもビールがワインよりもつくりにくいといわれるのは、大麦は発酵させる前に麦芽(モルト)にする必要があるからです。

この大麦から麦芽にするまでの製麦工程がビール製法の第一段階です。

大麦は、まず始めに、水に浸し発芽させます。

これが緑麦芽(グリーン・モルト)ですが、緑麦芽は水分を吸収するとどんどん発芽し続けるので、熱風(約80℃)で焙燥させ発芽の成育を止めます。

これでようやく麦芽の青臭さが抜け、ビール特有の香ばしい風味や色が生まれるのです。

その後、根を取り除き麦芽は貯蔵されます。

この焙燥の時の水分量、温度、時間などによって違った麦芽(最終的にはビール)ができます。

いろいろなモルト

最も軽い焙燥の淡色麦芽(70℃前後)はピルスナー・タイプのビールに用いられます。

これより長く強く焙燥させた(120℃前後)濃色麦芽は焦がし焼きまでしないですが、強い焙燥香を持っています。

コクと甘味が特色でイギリスではぺール・エール・モルトと呼ばれ、ヨーロッパ大陸ではウイーン・スタイルにあたる麦芽です。

また、加湿焙燥というほとんど煮込み状態でつくる麦芽はアメリカではカラメル麦芽、イギリスではクリスタル麦芽、ヨーロッパ大陸ではミュンヘン・スタイルと呼ばれています。

焙燥温度をさらに高くしてつくる麦芽はその色と豆のような味からチョコレートを連想できるのでチョコレート・モルト、またほとんど焦げるまで焼いたものを黒麦芽と呼んでいます。

このほかにも、8種の異なる麦芽を用いたビールもあります。

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インフュージョン法とデコクション法

醸造所で麦芽は、インフュージョン法とデコクション法といういずれかの方法で、仕込釜と呼ばれる容器の温水中で糖に変えられていきます。

インフュージョン法は紅茶を滝れるのに似ていて、イギリスの醸造人に伝統的に好まれています。

このインフュージョン法は65℃~68℃で1~3時間行われます。

イギリス人は彼らの麦芽はトラブルに会うこともなく甘く、クリーンであるといいます。

またヨーロッパで伝統的に用いられているデコクション法は、より複雑ではありますが、糖化はより完全に行われます。

デコクション法を用いている指導者たちは、彼らなりの伝統とクラフトマンシップ(手工業気質)のプライドを持っていて、1回の仕込みに2、3回の操作を行っています。

デコクション法は35℃の低温から始め、5、6時間で終了します。

この間麦芽を煮ている液(マイシェ)の一部は定期的に取り除かれ、高温まで加温された時に除かれた分が再び戻され、マイシェ全体が約76℃になるまで徐々に加温されるのです。

装置と技術の両方が合体したこの加温方法は、インフュージョン法の一歩進んだ方法であるといわれています。

できあがった液は釜の二重底からあるいは分離槽を通してろ過を行います。

これが麦汁と呼ばれるもの。

ろ過を1度行った後、残渣(残りカス)にかけ湯をして麦汁を集めます。

しかし始めのろ過で得る麦汁(一番麦汁)がたいてい最も麦芽香が高く甘味が強いです。

麦汁の煮沸からホップ添加へ

ゆっくりとろ過された麦汁にホップを加えて煮沸します。

この状態が製造工程の第二段階。

煮沸時間は1時間か1時間半、時にはそれ以上長い場合もあります。

ホップは花(雌株につく毬花〈球花ともいう〉)そのものを丸ごとか、ペレットと呼ばれる圧縮された形のものか、あらかじめ抽出しておいたホップエキス(液体抽出物)が使われるかさまざまです。

ブルーマスター(醸造技師)によっては、「ペレットは空気中の酸素から守られているので花そのものより酸化しにくい」と言ったり、「やっぱり花の方がホップの樹脂、オイル成分が残っていて、ビールにはこれが1番」などと言っています。

またホップエキスを使ってしまえば簡単ですが、これはホップをただ単に抽出しただけであり、どこか天然ホップとは香りが違ってしまっているように思います。

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麦汁の煮沸からホップ添加へ その2

ホップは煮沸中1度または2、3度に分けて添加されます。

はじめに添加するホップは苦味と辛さをビールに与えます。

多くのブルーマスターが自分のためにだけビールをつくるとしたら、きっとお客に飲ませるビールより苦いものをつくるはず。

そして煮沸終了直前のホップ添加は、アロマ香をつけるためのものです。

花を用いる時は、麦汁冷却前にストレーナー(濾し器)を通してカスを取り除きます。

ストレーナーの中に新しいホップを置き、さらに強いアロマ香をつけている醸造所もあります。

添加されるホップは普通1種類だけの場合もありますが、数種類をブレンドして用いることもあります。

苦味用のホップ(ビター・ホップ)はワーカディ・ホップ(平凡なホップ)といわれていますが、甘くて香りのよいアロマ用のホップ(アロマ・ホップ)は「ホップの貴族」といえます。

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麦汁の煮沸からホップ添加へ その3

ビター・ホップにもさまざまな種類があります。

ソフトタイプは、イギリスのファグルスや辛口のノーザン・ブルワーなど。

古典的なアロマ・ホップの中にはアメリカン・カスケード(ワシントン州ヤキマ・バレー産)のようにミント香やゼラニウム(西洋アオイ)香やクエン酸の香りを持つものも。

また、イングリッシュ・ゴールディングのように刺激香のあるもの、ジャーマン・ハラタウやヘルスブルック、テトナング、チェコのザーツ種などのようにフレッシュでデリケートなものがあります。

このほかにも多くの品種はありますし、新種も定期的に紹介されています。

ホップを加えて煮瀕し終った麦汁はビール特有の苦味と香りがつき、タンパク質が凝固・分離して清澄な液になります。

そして発酵の工程へ進むのです。

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酵母の発酵の仕組み

熱麦汁は冷却機で5℃程度まで冷やされて、酵母を加えて発酵タンクに入れられます。

タンク内は発酵熱により麦汁の温度は上昇しますが、ビールの種類によって各々の最高温度が保たれるのです。

この期間に酵母の働きで、麦汁の糖分はアルコールと炭酸ガスに分解され、「若ビール」ができあがります。

ビール・スタイルの分類を製造方法から歴史の古い順に、自然発酵ビール(純粋培養の酵母は使わず野生の酵母を使用。

ベルギーのランビックビール)、上面発酵ビール、下面発酵ビールの3種類に分けられます。

上面、下面という名称はこの発酵中の酵母の動きからいわれます。

発酵の仕組みが理解されるまでビールの発酵は、常温(15℃~20℃程度)でそれぞれ好き勝手な方法で行われていました。

この温度では、発酵が終了すると酵母は槽の上面に長い間浮いて層をつくるので上面発酵酵母と呼ばれ、ナチュラルでフルーティな香りをビールに与えてくれます。

上面発酵用の酵母でつくられるビールは古典的な醸造法によるビール、たとえばエール、スタウト、ポーター、アルトビール、ケルシュ、小麦ビールがあげられ、常温で飲むと芳香が非常に強いです。

また普通8日要する発酵がたった3、4日で行われるのです。

伝統的な上面発酵では酵母は槽からすくいとられて、発酵した若ビールは樽かタンク内へ移されます。

次にこのビールは常温で(たいていは地下室)2、3日から1ヶ月、あるいはごくまれにそれ以上の間熟成されます。

上面発酵と下面発酵

1800年代から1900年代初期にかけて、保守的な醸造所が上面発酵にとどまっている間に、世界中で下面発酵に切り替えられていきました。

この切り替えが1番遅れたのはイギリス。

しかし、このイギリスも1970年代後半から1980年代初期には下面発酵も行われ、上面発酵は小さな醸造所でリバイバルを楽しむ程度に行われていきました。

現在では、発酵中の温度調整が1年中行われるようになったので下面発酵はより簡単になり、ほとんどの国の消費者は下面発酵のラガービールに慣れてきました。

上面発酵も下面発酵もどちらの方法でも濃色、淡色ビールを生産することはできますが、両者の差は赤ワインと白ワインの差ほどあるのです。

上面発酵はより強く複雑な芳香であるのに対し、下面発酵のラガービールは清澄で軽く、まろやかな味わいが特徴です。

ビールの特徴の決め手

果実香は上面発酵ビールではすぐわかりますが、優れた伝統的なラガーにもある、大麦本来のものです。

ラガーの古い発酵方法では5℃からはじめ9℃まで昇温し、またはじめの温度に戻します。

今日多くの醸造所で比較的温かい温度での昇降温サイクルがなされています。

発酵は2週間行われた後、0℃で3週間から、古典的製法では3ヶ月間熟成がつづきます。

熟成中、2、3日だけ発酵させた麦汁を少し加えることで二次発酵と自然なガス付けがより活発になります。

この方法はクロイゼン(麦汁添加法)といわれています。

いろいろな醸造法を経験してからこのクロイゼンを行うかどうかは最後に決めること。

もちろんビールの特徴や製品の優劣の決め手となることは免れません。

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